色を探究する(’23)
講義メモ
第01回 色の世界へのいざない
トピックスをあげながら、さまざまな分野の「色」の紹介と、分野間のつながりを紹介しながら、色というものの基礎をとらえていく。
- 清少納言の枕草子の中で表現されている色について
- 色相、明度、彩度
- 補色:色相で正反対の位置にある
- 物理補色:混色すると灰色に近づく色
- 心理補色:見た後に白紙を見ると残像として見える色
- 医者は血の色を見てるから緑色や青色の補色残像に悩まされていた
- 壁や手術着を緑や青にすることで補色残像を抑えられる
- 色はどうして見れるのか
- 目で見る
- 目の視物質というセンサーで受け取る
- 色を感じるのは3種類の視物質、赤青緑
- 物理的には波長が違う
- 担当する視物質で感知できる波長が違う
- かぶっているところは、どちらの方が強い刺激かで判定
- 光の三原色
- 色の三原色
- ものの色は反射した光の色
- 赤にみえるものは、緑と青を吸収し、赤の光だけを反射している
- 色を混ぜると反射する光が減り、暗くくすんだ色に
第02回 言語文化の中の色―色を表現する言葉―
色を表現する言葉には様々なものがあり、場面や目的に応じて使い分けられている。また、色を表す言葉は文化によっても異なる。様々な色の表現方法やその文化差について概説する。
- 白といっても色々な言い方がある
- パールとかクオーツとか
- 車の色には鉱物の名前が使われることが多い
- 単に色の呼び方ではなく、質感にも影響していることもある
- 色名(しきめい)の種類
- 商業的色名
- 2次的色彩語としての色名
- 空色:空の色は変わるのに固有の特徴を使っている
- 固有色名:桜色、桃色、土色、鶯色、コバルトブルー
- 伝統色名:茜色、山吹色
- 流行色名:モーニングスターブルー(映画?きっかけで流行った色名)
- 慣用色名:JISで決められている 百郡、納戸色
- 系統色名:色名について何も知識がない人でも言葉で表せる方法
- 色の名前と形容詞を組み合わる
- 白郡は「やわらかい緑みの青」など
- うすい緑みの青=水色 ちょっとわかりづらい
- 基本色彩語
- 客観的に定義することが困難で平易な言葉で説明することができないような言葉
- 赤、青など
- あずき色はあずきの色から想像できるのでNG
- 赤紫は赤と紫が組み合わさった色だと想像できるのでNG
- 日本語の条件
- 「~い」といえる:赤い、白い、青い、黒い
- 「まっ~」:真っ赤、真っ白、真っ青、真っ黒
- 「まっ~い」が言えるのは白と黒だけ
- 英語だと10個くらいある
- バーリンとケイによる基本色彩語発展の過程
- どの社会でも最初は白か黒から始まって、だんだん増えていくという説
- 反論もある
- 色彩技術に関する色名
- 文学的色名
- 雪の下:表に白、裏に勾配色を重ねた色
- 重ねの色目

イヌイットの話
- 人類学
- イヌイットの地域に居住して研究
- 北極点、アークティック・サークル
- 長夜と白夜がある地域、ツンドラ地帯
- 人間の背丈よりも高い樹木が生えない
- 冬は白銀の世界、夏は色彩豊かになる
- 一角クジラを解体しているときの血の赤や、夕焼けなどもある
- 日本と同じような近代的な住居で暮らしている、電化製品やネットもある
- 一方で、罠猟や狩猟採集も続けている民族
- 肉を取ったらフローリングの床に段ボールを引いて肉を並べて食べたりする
- 二重の色彩世界
- 近代の色彩世界
- 物体から切り離された色彩それ自体
- 大地の色彩世界
- 個体や液体や気体など、目で見られる物体の具体的な状態の一つの側面
- qaquptuq: それは白い状態にあるという意味
- 状態を知るための手がかり
- 例
- 黒っぽい海氷は薄くて危険
- 真っ白なホッキョクグマは脂肪がなくて飢えているので危険
- イヌイト語の色彩語彙
- 基本色彩語彙
- 派生色彩語彙
- よい、似ている、傾向がある、などの接中辞
- 暗喩的色彩語彙
- 物質などを使って表現する語彙
- イヌイトから見たバーリンとケイの研究について
- 焦点色が言語の違いを超えることが分かった
- 典型的な色彩
- 典型的な赤はどの言語でも同じような色彩
- サピアウォーフの言語相対性仮説の補完
- 色は言語の違いに左右されない普遍性がある
- 色彩語彙の普遍的な進化の仮説についてはまだ分からない
- そもそも進化するのか?歴史的変化では?という指摘
第03回 歴史文化の中の色―意味付けられた色―
日本では歴史上比較的古い時代から様々な色が使われてきた。一方ヨーロッパで色が盛んに使われるようになったのは中世以降だという。本章では日本とヨーロッパでの色の使われ方や、その意味合いをそれぞれの文化的文脈の中で検討する。
- 服装に焦点をあててみていく
- 壁画に書かれている服
- 陰陽五行説
- 上着の色がせいしょくとして出てくる色
- 伽藍の色彩も
- 源氏物語絵巻
- 結構カラフル
- 他の地域ってどうだったの?
歴史学者の先生
- 色は人間社会でさまざまな社会的メッセージをもたらすメディアとして機能
- 色の好みのアンケート
- ヨーロッパとアメリカ:青50、緑20、白と赤10%
- 日本:白40、赤20、黒10
- 明暗見獏(白黒赤青)が基本の色とされていた
- 陰陽五行説:東=青、西=白、南=赤、北=黒
- 宗教が色の意味付けを与えていた?
- ヨーロッパでは方位と色を結びつけることはなかった
- 三色システム:白赤黒
- キリスト教が色の規範を与えていった
- 暗い色(黒、白、灰色)を優位に置く
- 青などの雑色は評価されなかった
- 青色革命 12・13世紀
- 衣服紋章における青色の仕様の高まり
- 技術的要因、経済的要因
- フランス王家の紋章に青を使うようになった
- 独自の権威を表そうとした
- 協会のステンドグラスにも
- それまではマントも赤だった
- ヨーロッパ紋章の色の時期別頻度
- 12-15世紀:赤が多い
- 17世紀にかけて青が増える
- ヨーロッパの緑とか黄色について
- 緑は自然とかのポジティブな意味と、不安などのネガティブな意味を持つ
- 賭博のテーブルの色は緑色だった
- 不道徳というニュアンスも
- 黄色は狂気とか理性を失った人間を象徴する色
- 多色だと悪しき意味合いになる
- 二色服:帰属や所属、従属性を表す
- 道化:アウトサイダーなので多色で表現されている
- 貴族の子供服:青と黒 or 赤と黒
- 都市役人
- 歴史における色
- 空間を組織する
- 人を同定して分類して区別する
- 冠位十二階
- ヨーロッパだとアウトサイダーな色の黄色も高貴な色として扱われている
- 染色技術の難易度も色のイメージに影響するのかも
- 濃い色は複数回染色しないといけないから高貴、など
第04回 見える~見えない~見せる~見せない色―色をめぐる物語―
人の気持ちにより、色が見えたり見えなかったり、見せたり見せなかったりする。また、その色の持つ性格的なものも、人の感情などに作用することも少なくない。様々なジャンルの色にまつわるエピソードやキャッチフレーズなどから、色の感じ方・表現の仕方を味わってみる。
- 無色・透明
- 色がないこと
- 透明な場合も
- 色彩がない状態が絶対条件
- 無彩色のことを指すこともある
- 能
- 能とは色彩をすべて否定したところに、逆に花を見る特異な演劇空間
- 歌舞伎は浮世絵であり、能は水墨画に近い
- 隅田川
- 色のない虚ろな空間で表現される
- 白が重要
- おばけ、白装束
- お化けの三角巾
- 角隠し
- 並置混色
- 黄色と青を格子状に並べると緑に見える
- モネとかも使ってる
- 布は糸の色同士が混ざらない
- 縦糸と横糸で並置混色をする例もある
- グアテマラは着ている服で出身が分かるといわれている
- 最近は男性はTシャツとジーンズになりつつある
- かかる色
- 虹
- 色数は地域差がある
- グアテマラでは2色だったり5色だったり
- マヤの世界観
- 方位と色が結びついている
- 緑が中心
- ムンク
- カール・ヨハンの春の日
- 太陽の表現
第05回 見える色・見えない色1―光と色―
光には様々な性質がある。例えば、空気、水、その他の物体に衝突したり、通過したりする際に、光は反射、屈折、吸収、透過などの性質を示す。そしてその結果が、虹や青い空、赤い夕日、ものの色といった、色となって表れる。光の性質と色との関係について学ぶ。
- 月
- 反射した光が見える
- 光が示す性質
- 直進、反射、屈折、透過、散乱、回折、干渉
- 光と波長
- 屈折する角度:波長の短いほど屈折しやすい
- 散乱も
- プリズムによる太陽光の分散
- 太陽光がプリズムに入ると、波長の長い赤はあまり屈折せず、波長の短い紫は大きく屈折する
- 虹
- 水滴中の光の経路
- 太陽光が水滴中で屈折し、内部で反射し、出るときに屈折しする
- その過程で波長の違いで異なる角度で光が出ていく
- 太陽光が大気を横切る距離
- 日の入りと日の出で空は赤くなり、日中は青い
- レイリー散乱
- 晴れた日は空気に当たって散乱する
- 青のような波長の短い光ほど散乱しやすい
- 雲の水滴など大きいものに当たった光は、波長に関係なく散乱する(ので白っぽくみえる)
- 夕方になると青い光は散乱しすぎてしまうので見えなくなることで、赤っぽい色が残る
- 夕方だと通る大気の距離が多い
- 波の干渉
- 波の山が一致:大きくなる
- 山と谷が一致:打ち消しあう
- ヤングの干渉実験
- 単色光をピンホールとスリットを通すと干渉縞ができる
- シャボン玉、クジャクの羽、玉虫なども干渉による色
- 構造色という
- 薄膜での光の干渉
- 薄膜の厚さ分だけ反射光がずれるので干渉が発生する
第06回 見える色・見えない色2―石と色―
物質はそれぞれ固有の色を示す。赤、緑、青といった有彩色だけでなく、黒、白、無色透明など多彩な色がある。宝石、金属、土を例に、透明、金属光沢といった色が生じる仕組み、土壌の性質と色の関係について学ぶ。
- 無色透明
- 空気も無色透明
- 水晶、プラスチック
- 無色透明な物体を通過する光
- 入射光の一部が反射される
- 普通は物質中で光が吸収・散乱が起きるが、無色透明な物質ではそれが少ない
- スリガラス
- 表面がざらざらしているとぼやけて見える
- 水でぬらすと表面のがたつきがなめらかになって、透明になる
- ダイアモンド
- 色々反射とか屈折するから色々な色に見える
- 酸化アルミニウムの結晶構造
- コランダム:無色透明
- ルビー:赤色 クロムが混ざる
- サファイア:青色 チタンと鉄が混ざる
- 金属
- 基本的に光を通さない
- 薄いアルミニウムでも光を通さない
- 金属表面
- 反射、歪み、表面に凹凸(乱反射)
- 多くの非金属は反射、拡散反射、吸収する
- 光の波長ごとに反射率が違うので、色が違って見える
- 金
- 液体だと赤っぽく見えたりする。金ナノ粒子
- ガラスに金ナノ粒子を混ぜ込むことで、ステンドグラスの赤色や、金赤の切子ができる
- 土と色
- 火山灰、洗浄後
- 鹿沼土(かぬまつち)
- 赤玉土(あかたまつち) そんなに赤くはない
- 黒土、黒ボク土
第07回 見せる色・見せない色1―動物と色―
動物は生きるためにその体の色を利用している。捕食者から身を隠すための目立たない体色をもつ場合もあれば、捕食者から忌避されるような目立つ体色の場合もある。このような動物の体色の役割や、色への応答について学ぶ。
- 隠ぺい色
- 見せない色
- カラスの黒色は隠ぺい色と言われているが、本当に効果があるかは分からない
- ハイイロシロアシネズミは内陸型と砂浜型で色が違う(その地域の表土の色に似ている)
- 模型を使ってそれぞれの環境での捕食者からの攻撃頻度を調査したら、その地域にあった体色の方が攻撃頻度が低かった
- 擬態
- コノハチョウ、コノハムシ
- カウンターシェーディング
- 動物のからの表面の太陽光が当たる部分が暗い色に、陰になる部分が明るい色になる例がよく知られている
- スズメ(上側が茶色で、お腹側が白い)
- 上から見たら枝と混ざって見える、下から見ると空と同じような色に見える
- サバも
- 周囲と混ざる色というだけではなく、自然光が当たった時に一様な色にみえて目立たないようになっているのではないかという説もある(分かってはいない)
- 標識職
- 見せる色
- 他の生物やほかの個体に認識してもらうための色
- 婚姻色
- ベニザケ
- 通常は白っぽい色をしているが、産卵の時期になると赤くなる
- オスは赤い色をしたメスを好む
- キジの肉垂(にくすい)
- クジャク
- 色だけじゃなく動きも関連する場合があるので、必ずしも色が関わっているかは分からない
- 警告色
- ヤドクガエル
- 黄色と黒のまだら模様
- 毒があるから食べられない
- 目立つことで、食べると死ぬことを伝えている
- 一度食べられて学習してもらう必要はある
- ナナホシテントウ
- ミューラー型擬態
- ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチ
- 別の種類なのに同じような体色を持つ
- ミツバチの毒を警戒している捕食者は、スズメバチも警戒する
- 本当にその意図なのか、偶然なのかは分かっていない
- ベイツ型擬態
- 毒を持っていないものが、毒をもっているものに擬態する
- 毒をもつミツバチに擬態したハナアブ
- 毒をもつスズメバチに擬態したセスジスカシバ(我)
- 体色の働き
- ミドリフトタマムシ
- 反射しているように見えるけど、実際には葉っぱと同じように見える
- タマムシ色の隠ぺい効果の検証
- タマムシの翅と、似た色(写真とか、光沢のある別の色とか)の検出確率を比較した
- シマウマ
- 白黒のストライプ
- 体のシルエットが分かりづらい or 群れている時に何匹いるか分からなくする効果があるという説があったが、否定されている
- アブに対する、縞模様の忌避効果の検証
- ウマに縞模様の布をかけてアブが飛来する頻度を調べた
- 白一色と黒一色は同じくらい
- 白黒の縞模様だけ頻度が下がった
第08回 見せる色・見せない色2―花と色―
植物は色を使って太陽光を集め、さらには昆虫や鳥など
を誘引し、花粉や種子の散布のために利用している。花や果実の色の役割、それらの色を生み出す色素の特徴や性質について学ぶ。
- 花の構造
- 生殖器官としての花
- 花粉を運ぶ方法
- 風を利用するもの
- イネ
- 水流など水を利用するもの
- 動物を利用するもの 被子植物に多い
- 同じ植物から同じ植物に移動してもらう必要がある
- 昆虫類
- ミツバチと菜の花
- 鳥類
- メジロとウメ
- コウモリ
- バナナとコウモリ
- 植物の色素
- クロロフィル
- 緑色の色素、光合成に利用
- カロテノイド系
- 赤、オレンジ、黄色
- 光合成に利用
- 過剰な光を拡散
- 抗酸化作用
- フラボノイド系
- 赤、青、紫
- 一部の紫外線吸収
- ベタレイン系
- 赤、紫、オレンジ、黄色
- 抗酸化作用
第09回 表現された色・纏う色-赤を染める天然物の色彩-
染織品の赤を染める天然染料を、科学と文化の両側面から探究する。日本の赤〜世界の赤を染める天然物について、茜とカイガラムシ(コチニール・ラック)を中心に解説する。色素の性質、茜や虫の生態などの科学的事実を確認した上で、染料として使用された歴史的な背景や文化に関する赤にまつわる物語を紹介する。
第10回 近代の美術と色彩1―画家たちが見出した色彩―
古典絵画において色彩を用いて描くということは、固有色(ローカルカラー)に陰影と明暗を施し、対象の形態や質感を再現することだった。近代の画家たちはこうしたアカデミックな手法から脱し、絵画のあり方を変革していった。その起点となった印象派に注目し、筆触分割や補色の効果など彼らの用いた新しい手法とその効果、後世に与えた影響を検討する。
キーワード:印象派、筆触分割、新印象主義、点描、視覚混合、補色、固有色、空気遠近法
第11回 近代の美術と色彩2―近現代美術と色材―
印象派が戸外制作によって風景画を刷新した背景にチューブ絵具の普及があったように、新しい技術や色材が芸術家の表現に変化をもたらす契機となることがある。また画家の用いる色彩やその組み合わせ(パレット)が画家の個性や独自性と深く結びつくことも近現代美術の特徴である。近現代の絵画史において、絵具や塗料などの色材が重要な役割を果たした作家・作品について考察する。
第12回 表現された色・とらえる色 ―こころと色―
色:colorの意味には、視覚的に認識できる色彩ばかりでなく、物理的な視覚では見ることができない、人の個性や人柄の意も含まれている。本章では、色に表れる多種多様なこころとのかかわりを取り上げて、心理臨床の世界での色について、代表的なものを紹介していく。
第13回 環境を構成する色1─建築と色彩─
建築や景観に関わる色彩の基本言語や色彩の機能、効果などを理解するとともに、建築計画における色彩デザインの基本を整理し、心地よい建築・都市空間を形成する上で色彩が欠かせない役割を担っていることを学ぶ。
第14回 環境を構成する色2─景観と色彩─
景観と色彩の関わりを理解するとともに、特徴的な色彩景観の事例や美しい色彩景観を守り育む様々な取組みを通して、心地よい景観を形成する上で色彩が欠かせない役割を担っていることを学ぶ。
第15回 色と生きる
誰もが親しみやすい衣食住を中心とした日常生活の中での色のあり方、楽しみ方、活用法から、色彩論をはじめとした研究展望について取り上げる。